Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

麒麟の話

物憂げな日曜の夜の5分をいただく以上、こちらも本気で書かせてもらう。大学3年生の時の話をさせていただきたい。

 

我が母校の熊本県立大学では、白亜祭という名前の文化祭が行われる。モテないサークルの男たちがウェイの大学生に無理やり焼きそばを買わされるような、スクールカーストが露呈する弱肉強食の世界。まさにこの世界の縮図であったと思い返す。

 

僕は言うまでもなく大学では草食中の草食、サバンナで言うところの「小さめのシマウマ」くらいの存在であった。そのため、例年白亜祭の裏番組と称し、大学から歩いて5分くらいのところにある吉野家でいろいろな具材を乗っけた牛丼をゆっくり食べるという非常に静かなイベントを一人で黙々と行っていた。白亜祭にちなんで、白菜もしっかりと食べる。一応学費も払って県大生だったので、そこは譲れないこだわりだ。店員さんも何も言わずに紅生姜のケースを新しいものに変えてくれたりしたっけ。

 

そんなあまりに可哀想な僕の携帯が鳴った。現在東京で絶賛鬱病の、当時ダンスサークルの友達からの連絡だった。

 

本郷奏多着いたっぽいよ。」

 

そう。その年の文化祭のゲストは大河ドラマ・「麒麟が来る」に出演中の本郷奏多。今も彼にはあまり興味がない。しかし、名前は知っていたので一応僕も見ておこうと店を後にし、雨の中傘をさして大学へと向かった。

 

中に入ると早速焼きそばを買わされた。2つだ。一つ300円くらいした。悔しかった。一応食べてみるとめちゃくちゃうまい。これも悔しかった。

 

用件を思い出した。本郷奏多。彼に会いに、居ると聞いた大ホールへと向かった。すると入り口に案内の生徒が立っていた。無視してそこに入ろうとすると、チケットは?と聞かれた。僕は、ないと答えた。熊本県立大学を運営している気になっているその人たちに対し、学費を払って設備や学びを確保しているのは我々学生であるということ、一眼くらい見てもいいのではないか?と聞いた。白亜祭どころか、一般常識的にもアウトな質問である。いい加減にしてくれと言われたので、大ホールを後にした。

 

しかし、僕は諦めきれなかった。焼きそばを無理やり買わされ、一人で牛丼を食べてばかりの白亜祭で大学生の文化祭の思い出が埋め尽くされることが、歯痒くて仕方なかったのだ。

 

僕は大ホールの裏に回った。裏から侵入してでも、本郷奏多を見てやる。本郷奏多もここまでガッツを見せれば、握手の一つくらいしてくれるだろう。雨がひどくなり、大きな水たまりもできていた。しかし、背に腹は変えられぬ。既にグショグショの靴を脱いだ。水溜りに裸足でズブズブと入り、壁をよじ登ろうと手と足をかけたところだった。運営のスタッフが僕の奇行を発見し、本当にやめてください!!!!!と叫んだ。その時我に返った。

 

僕は虚しく、家路についた。