Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

俺は千尋。

僕の身長は181センチだ。日本人の中ではそこそこ大きい方に分類される。この身長にも、良し悪しがある。

 

良いところは、170センチ以下の身長の人に対し「小さすぎて見失った」とイジることができる。また低身長の女子に、高いものをとってあげることができ、好感度が上がる。ざっとこんなところだ。

 

悪いところは、よく頭をぶつけてしまう。多くの車に、乗りにくい。足が大きいので好きな靴が履けない。料理をしてると、キッチンが低いので腰を痛める。

 

この身長を、私は部活に入るとき、活かせるスポーツがいいと思い、バスケ部に入った。そして下手の横好きで大学まで続けた。そこでジャンケンに負け副キャプテンになった年、とある事件が起きた。

 

それは福岡県に遠征に行った時のことだ。私は毎回、必ず車を出していた(可愛いマネージャーが隣に乗ってくれて凄くテンションが上がるし、後ろに乗ってる部員を無視すればギリ、デートとも言える最高の時間になるから。バスケ部に入って、一番伸ばしたのはシュート力や体力などではなく、鼻の下だったというラッキースケベお兄さんは僕のことで。というか、なぜ隣に可愛い人を乗せた時、あんなに運転中穏やかになれるだろう。いつもイライラする渋滞も、信号の不都合も全てワクワクに変わる。車の中を流れる音楽は、いつもよりワンテンポ速く感じたりなんかしてしまって。あー、淡い。淡いわぁ〜、淡いわぁ。)。

 

会場に着いた。早速バッシュの紐を結ぶ。体が暖まるまで軽く走り、少しだけ奇声を出す。「ボールにしゃぶりつけ!」という僕が作った、なんの意味もないただのセクハラな名言が体育館の中で空を切る。ここまではいつも通りだった。僕は満面の笑顔だった。その後、事件が起こることも知らずに。

 

試合が始まった。僕はそこそこリバウンドが得意だった。リバウンドとは、シュートして外れたボールをびょんっとジャンプして取って、味方にパスをする行為だ。その日もびょんびょん跳ねていた。

解き放たれた、野うさぎのように。(この描写には、なんの意味も、ない。)

 

そして中盤、またビョンと跳ねて着地をした。そして味方にボールをやろうと振り返った。その時だった。相手と、ラッキースケベをしそうになった(チューしそうになった)。なんとかかわし、俺のトゥルースリーパー級の柔らかな唇を死守した。まるで、強風に煽られる、竹芝のように。

 

そして無事味方にパスをして走り出した。攻めは最大の防御、ここからどんどん点数取る!と思っていた時、相手選手に声をかけられた。

 

「大丈夫ですか?いや、てか全然大丈夫じゃないです!!顔からめちゃくちゃ血が出てますよ。」

 

僕は焦って手を額に当てた。瞬く間に手のひらは紅に染まった。牛丼のそばに佇む、紅生姜のように。

 

すぐに審判の方を向き、「すみません!」と叫んだ。気づかない。「すみません!血が!血が!」パニックだった。それでも気づかなかったので僕は大きく右手を上げ、「見て!血よ!血!!!!!」と叫んだ。

 

千と千尋の神隠し」で坊と対面した時の、千尋のように。

 

その異常な光景に審判は流石に異変を察知し試合を止めた。すぐに救急車が来た(呼ばれるレベルに出てた)。圧迫止血され、病院に行くほどじゃないと判断され、救急車を降ろされた。頭にでかいはんぺんのようなバンドエイドを貼られ、その日は終わった。

 

これだからバスケは辞められないのだ。