Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

ダースベーダー

地元の駅の近くにダースベーダーが現れた話。

 

高校生の時である。当時僕は電車通学をしていた。その休日は部活が昼からだった。家を出て自転車にまたがり最寄駅(と言っても4キロくらいあるが)へ向かった。電車に50分ほど揺られ、降りてからまた30分ほど自転車に乗り学校に着いた。

そして3時間半バスケをした後、蛇口の水でシャンプーをし石鹸で体を洗い着替え、その当時付き合っていた彼女と夜まで遊び、また自転車に乗って電車に乗った。ここまではいつも通りだった。

その日は寒く、日が落ちるのも早かった。駅へ着き片耳にイヤフォンを装着した。僕は自転車に乗りながら歌をよく歌っていた。

 

普通の人は人気のないところで歌い始める。また、声量は控えめであろう。しかし僕は当時、恥ずかしいと言う感情がまだDNAに組み込まれていなかったので、自転車に乗った瞬間に、ミュージックスタートという甲高い声を上げた。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁたぁぁぁぁぁにぃぃ!!!会いたくてぇぇえええ!!!あいたくてぇぇえええ!!!」モンパチのあなたに、である。

 

そしてもう一度、辞めてくれ、と言う顔をしたチャリの上で声を張り上げた。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁたぁぁぁにぃぃぃぃ!!!会いた?!?!」

 その時急に目の前に黒い影が現れた。真っ暗な服を着たおっさんだった。このままじゃおっさんを轢いてしまう!!咄嗟にハンドルを右に切った。その先にはポールがあった。これほどポールを恐怖の対象に感じたことはない。しかしもう手遅れだった。ポールに激突し、体は前方へ投げ出された。すぐ近くの電気屋の店長が何の気なしに植えたであろう草木に頭から突っ込んだ。2分ほど痛みと混乱で動けなかった。

のそのそとお尻をよじりながら草木から脱出し、周りを見ると誰もいなかった。逃げたな。あのおっさんは恐らく地獄に落ちるだろう。

ふくらはぎの痛みに耐えながら愛車を探した。かわいそうに。彼はポールのそばで横になって黄昏れていた。ごめんな、今まで草の中でいろいろ考えてたんだ、一緒に帰ろうと優しい声をかけてチャリを立ち上げ、ペダルに足をかけたとき、異変に気がついた。

前に進まないではないか。

そう、ポールにぶつかった衝撃で、僕の愛車の前輪は完全に変形しており、カマキリがカマをしまった時のようになっていた。

僕は押して帰るしかないと思いハンドルを握って歩き出した。すると、タイヤが車体に擦れて

シュコーシュコーシュコーシュコー

という音がした。ダースベーダーの登場である。本当に笑えなかった。やむを得ず自転車を駅に停め、ちょっと泣きながら歩いて帰った。

その日から僕は、モンパチのことが嫌いである。