Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

フィリピンの思い出

僕はまだ世界を知らない。

 

事実、小学5年生から熊本で県外に住んだ経験もなければ、教育関係以外の仕事に就いたこともない。その割に毎日感じている幸福度は高く現状維持を望む気持ちもかなり強い。

 

そして、まだ知らない、とは言うものの人生ももう1クォーターが終わりを迎えようとしている。日本で大学を出ると、残酷なことに少なくとも22歳まで学生だったことを意味する。そして瞬く間に25歳を迎え、人生100年時代の1/4が終わるのだ。

 

現状、今はもう8月も下旬で夏休みも終わる。9月からは多くのイベントに忙殺され、11月が終われば12月。私の25歳の誕生日が来るのだ。

 

自分の知っている世界を広げたい、同じ想いを強く抱いていた19歳の夏を、ふと思い出す。

 

その日僕は赤いパンツを大量に購入していた。目前に控えた1ヶ月のフィリピン留学。その頃から気合いは下着に表れるタイプだった。同じ下着を履き続けることは、同じティッシュで何度も鼻をかむような気持ちになってしまう。

 

下着の山を、超えていけ。

 

そう言い聞かせながら僕は、真っ赤なボクサーパンツにほおを、ぐっと引き寄せた。

 

熊本空港に向かった。案外、すんなりと出国した。飛行機の中で、空にいる間上を見続ける。高いところにいるときに、それよりもっと高いところを見ることができるのは、高いところにいる人の特権だと思う。いつでも超えられるハードルを、人は意外と越えようとはしないものだ。

 

クラーク空港という空港に着いた。体を伸ばしながら、思い切り息を吸い込んだ。鼻腔を通り、肺へと空気が流れ込んだ。ワクワクした。

 

しかし、次の日僕は42度くらいの高熱におかされた。環境の変化に意外とナイーブな、僕の可愛い一面である。

 

それからというもの、フィリピンの街中を歩き回った。しつこくタトゥーを勧めてくる女性、素手で焼いたとうもろこしを売りつけてくるおっさん、タバコを一本だけ売ろうとしてくる男性、スタイルがとても良いが明らかに胸にボールを入れている男性。ちょっと怖い思いもしたが、賑やかで素敵な場所だった。

 

僕は、気がつくとAqua Timezの「千の夜をこえて」を熱唱していた。うるさ過ぎる周りに対抗したかったのかもしれない。周りの人々は、ドン引きしていた。平気で初対面の私の尻を触ってくるような図々しい彼らの唖然とした顔は、今思い出しても腹が立つ。

 

やはり故郷は多ければ多いほど良いと思う。我々のあっという間に瞬く間に終わってしまう人生の中で、知らずに死ぬには勿体無いくらい素敵な場所が、世界にはたくさんあることを、是非ともこの赤パンを振りかざしながら、伝えたい。