Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

Shall we dance?

有名なセリフである。直訳すると、踊りませんか。この台詞を耳にしたことがある人は多いのではないだろうか。

 

我が母黌では体育祭のフォークダンス相手を事前に決めるシステムだった。相手が決まらなかった男子は自動的にボウズにさせられる運命を辿ることになる。その恐怖の伝統により、男子の女子に対するダンスへの誘いの言葉が体育祭が近づくにつれ学校に飛び交った。

そんな中、私の1人の友人は見事相手を決め、体育祭での青春への切符を手に入れた。彼とは高校3年間共に電車通学をした仲で、何に関しても無駄に熱意のある男だった。正直、鬱陶しいこともあった。ある日、彼は僕にダンスの相手に告白をしようか迷っていると相談してきた。僕は迷わずやめておけと答えた。正直パッとしないルックスだし、トークもあまり弾まず、極め付けは、彼がその子と付き合ったら面白くないというのが理由だった。熱意と自信だけで行う告白は、スカイツリーの先端から紐なしバンジーをするようなものだ。しかし、彼は僕の助言を無視し、当日団席の裏で告白をした。結果は惨敗。帰りの電車で萎れたアサガオのようになった彼の姿を今でも鮮明に覚えている。本当に飯がうまかった。

 

彼は大学生になり、院まで進んだ。工学部で毎日苦悩の日々が続く中、健気な彼は一生懸命研究を続けている。そんな彼から突然電話がかかってきた。どうせまたくだらないことで悩んでいるのだろうと思いながらも電話に出ると、彼はショッキングな内容の話をした。

最近彼女に浮気されて別れた。

浮気は絶対に悪である。不倫はもってのほかだ。それ関係のことをした人は全員地獄に落ちると相場は決まっている。当然僕は彼の肩を持った。きっとこれから先いいことがある。浮気されたもの同士、共にいい人見つけよう。

彼は相槌を打ちながら、インスタの話を始めた。工学部だからインスタとかアプリへの知識が豊富でうまく使いこなせる、などと話していた。工学部でなくても使いこなせている人はたくさんいるので、鼻をほじりながら話を聞いていると、彼は急に話すのをぴたっとやめた。

どうした、と聞くと、インスタがおかしい。なんか、画面が動かん。なんやこれ。パスワードも変えられん。何が起きているのかさっぱりわからない。そう言った。

僕は急に彼が哀れに見えてきた。工学部に5年間在籍しているという自負やアイデンティティを振りかざし、さっきまであんなにイキがっていた彼が、その得意分野のインスタを乗っ取られたのである。ちなみに、シカゴの人からログインされたらしい。

猿も木から落ちるを現代語にすると、工学部インスタ乗っ取られる、ではないか、と思った。今日も飯がうまい。