Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

仇が仇で返ってくるパターン

 

与えた愛は、愛で返ってくる。

これは僕が今までの人生経験の中で見出した事実に近いことの一つである。

大学生の時の話である。2年生まではかなり真面目だった私が講義に出た際、いつも勉強を教え合う関係の友達がいないことに気がついた。LINEでどうしたのか聞くと、体調を崩しご飯もろくに食べられていないとのこと。彼は一人暮らしであまり料理をしない人だった。その日はバイトもなかったので、講義が終わってすぐ、近くのスーパーで具材を簡単に買い揃え、その友達の家に向かった。家に上がると、案の定ベッドで横になって動けないようだった。かなり熱が出ているらしい。

僕はすぐにキッチンへ向かい、簡単に肉うどんを作った。刻んだネギを乗せ、彼と一緒に食べた。彼はとても喜んでいた。お前は彼女か!と言われたので、いや、違うよ、と真面目に返した。僕は友達が食べ終わるのを見届け、自宅へ帰った。

その数ヶ月後に、テスト期間が訪れた。大学のテストはシビアである。落とせば来年もその講義を取らなくてはならなくなる。普段バイト尽くしの学生も、その期間はバイトをログアウトすることが多い。

僕もいつも通り勉強をしていた。暗記が苦手な僕は、アメリカ文学の作品名を覚えるのに手間取っていた。その時、うどんの彼が一枚の紙を僕にくれた。作品名と作者名の一覧になっていた。まさに、その時の自分が作ろうと思っていたものだった。

前世話になったからな!と、彼は笑った。僕は心からありがとうと言い、そのテストで自分にしてはそこそこいい点数をとることができた。愛が返ってきた瞬間だった。

 

それは、僕が高校生の時である。

僕は片道1時間半かけて高校へと通学していた。そのうち、50分ほどが電車だった。その日も、帰りの電車は混んでいた。座れるまで立つしかなかったので、壁に寄りかかっていると、突然、腹の調子が悪くなった。僕は昔から、すぐ腹を壊す。冷たいものや辛いものを食べても、扇風機が当たったまま寝てしまってもすぐに変な音がしだす。その日は夏だったので、きっとアイスを食べたせいだろう。

腹の中の変な音は、ガスへと変換した。内側から腹が膨れ、排出する以外の解決法がないと悟った。満員電車。罪悪感はあったが、思いっきり行った。しかし、この身体で伊達に17年生きていない。無音で全てのガスを電車内に放出した。

すると、私の近くで座っていた某私立高校の女子生徒の数人が、

「クッサ!誰か屁こいたけんぜったい!マジありえん。」

と話し出し、その匂いの元を辿り、僕の方を見た。僕はとっさに、怪訝な顔をして、近くにいたゴツめの高校生集団を睨んだ。幸いなことに、僕は割とスリムで髪の毛も短く、清潔感があったので、その女子生徒たちはそのゴツい男たちが空気を汚したとばかり思ってくれたようだった。僕は、自分の排泄物を人の排泄物に仕立て上げたのだ。完全犯罪、天晴れである。

 

その数日後のことだった。通学電車に乗ってうとうとしていると、いつも降りる駅を通り過ぎ、その次の駅に到着しそうなことに気がついた。3年無欠席の称号を得たかった僕は是が非でもその駅で降りて遅刻を避けたかった。急いで立ち上がり、混んだ車内の人々をかき分け、出口へと向かった。すると、例のゴツい人たちの高校の相撲部らしき生徒たちが出口に固まっていた。

「すみません、すみません!」

割と大きめの声で叫んだが彼らはイヤホンをつけている。仕方ないと思い体を横にして手を彼らの体の間にねじ込んだ。それでやっと気づいてくれたものの、ドアは無念にも閉まってしまった。

なんとか高校まで全力で走り間に合ったものの、汗だくだったので、八代から走ってきたの?と周りから揶揄された。恥ずかしかった。

僕は、電車の中で屁をこいて話題になった時は、手を挙げて自分だと言おうと決めている。