Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

サンタ苦労す

唐突であるが、僕の誕生日は12/25。クリスマスである。クリスマスには彼が多くの家庭にやってくる。赤い服に身を包み、極寒の中トナカイの引くソリに体を預け、夜通しプレゼントを配るというやや無理のある設定でそれでも毎年頑張るストイックなお爺さん。そう、サンタクロースである。

タイトルにあるように、サンタは苦労をする。僕はその話をせずに11月を終わることはできない。

僕は大学3年生のクリスマス時、病に蝕まれた。その病名は、「クリボッチやさぐれ症候群」。簡単にいうと、ヤケクソになっていた。街がクリスマス色に彩られるほど、僕の心は荒み、より寒さが身に染み、飲む酒の度数も上がっていた。

僕は、このままでは身が持たないと思い、SNSを全てアンインストールし、無駄な情報をシャットダウンすることにした。クリスマスに関する話をしてくる友達とも、一定期間縁を切ろうと考えていた。

そしてインスタをアンインし、次だと思いTwitterを開いた。そこで「チャリティーサンタ」の存在を知った。

チャリティーサンタとは、ボランティアの一つである。サンタの格好をして子どもの家を訪れサンタになりきってプレゼントを渡すというものである。本当に心温まる瞬間に何度も直面できるし、何より子どもの笑顔を生み出せる素晴らしい企画だ。

僕は、こんなに高尚なものにこんなチンケなモチベーションからでも良いのかと躊躇したが、催す側にいた友達からの誘いで、最終的に参加した。

サンタの声の練習から始まり、子どもの情報を軽く頭に入れ、いつも頑張ってるからご褒美だよ、といった内容のセリフを頭に入れて家に向かう。ワクワクした。

その家には男の子と女の子2人がいた。女の子1人目に、いつもピアノ頑張ってるね。2人目に、この前運動会で一番だったね。いつも見てるからね。とプレゼントを渡した。2人とも嬉々として受け取ってくれた。そして3人目の男の子の顔を見た。ギョッとした。本当に生き写しではないかと思うくらい僕のとある友人に似ていた。あっ、と思わずお父さんの顔を見てしまうほどだった。しかも、そのインパクトは僕の頭からセリフを消し去るのに十分すぎるものだった。

僕は、「君は、アレだね、あの、ね、凄いよね。なんか、やっぱ、分かるんだよ。目を見るとね。野球、、いや、とりあえず、凄いよ。いつも頑張ってるね。見てるからこれあげるね。」と最悪な褒め方をしてしまった。ちなみに野球というワードは、その子に激似の友達が野球をしていたことに起因する。

その子は、100人が見て93人が分かるほど嫌な顔をした。僕だけ褒め方が抽象的だな。おい、上のサンタを出せ。と目で訴えていた。僕は泣きそうになった。この子はきっと、本物のサンタさんがくると信じていたに違いない。僕のような、トナカイのクソより汚い心の持ち主の到来を待っていた訳がなかったのだ。

僕はスッと立ち上がり、子どもたちにこう言った。

「いいクリスマスを。来年もいい子にして待ってるんだよ。」

その次の年のクリスマス、僕は一歩も外に出なかった。ホワイトクリスマス。彼への罪悪感が次の年の予定まで真っ白にするとは、思っていなかった。