Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

ばおわ

タイトルの「ばおわ」とは「バイト終わったよ」の略である。大学時代、数々のバイトをこなしてきた私にとってはかなり馴染みのある言葉である。

私が経験したバイトの中で最も身体に負担がかかったバイトは引っ越しでも、ボディビルダーマネージメントでも、カバン作りでもない。屋台である。

屋台のバイトをしたことのある人なら分かると思うが、お祭り騒ぎの中で人気が出てしまうと途方に暮れてしまうほど人が並ぶ。次から次へと注文が行き交い、それ頼んでない!などと言われてしまうことが多々起きてしまう。僕はわりと冷静に対処できる自信があった。あの日のバイトを経験するまでは。

その日、熊本城の二の丸広場では大きなお祭りが行われていた。熊本地震からの復興を心から願っていると思われた人々が集い、食べ物を食い散らし、ゴミを捨て散らかし、見事僕のメンタルもズタボロにした。

その日、暗算が速い僕は電卓より優れていると判断され、会計に回った。いわば、レジ人間。レジヒラクサウンド的には完全にレジギガスである。ポケモンである。

しかしバイトあるあるで、やっているうちに仕事が増える。僕はビールをプラスチックのコップに入れる仕事を急遽任された。レジヒラク、はじめてのビールサーバー担当である。出だしは好調だったものの、途中から1つ問題が発生した。ビールの泡がやたら多いのである。

僕はそれを店長に報告した。やたらと泡が出るんですが、、そういった僕に店長はこう言った。

 

泡多かったやつは捨てるの勿体ないし全部飲んで、ええんやで。

 

僕はお酒に強い方である。しかし、3回中2回くらい泡が多い物が出てくる(クソビールサーバーだった)ので、飲むペースが尋常じゃなかった。言うまでもなくレジヒラクはだんだんネミヒラクになっていった。ひたすら眠い。もうすでに2リットルは軽くビールを飲んでいた。

眠くなると頭が回らず会計もミスが増える。500円の買い物で5000円を出した客に1500円のお釣りを出してハァ?!と言われたとき我に返った。このままではいけない。テンションを上げなければ。エメラルド世代には懐かしいと思われるが、めざめのほこらを彷彿とさせた。

僕はめざめるために、めざめるパワーとして声を張り上げることにした。

いらっしゃいませェエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!ビール、焼き鳥、餃子があるヨォ!!!!!ここは中華料理店かぁ?!?!違うか?!?!

などと訳の分からない言葉でテンションを張り上げて接客を続け、気づいた時には僕にスマホのカメラを向ける集団ができていた。すでに3リットルのビールを飲んでいた僕は、何ふり構わず、踊りながら接客をし見事会計もミスなく、ビールも捨てることなく、売り切れへとこぎつけた。

全てが終わり、店じまいのとき僕は笑顔から真顔に戻れないくらい酔っていた。店長との会話が滞るほど、のども枯れていた。その頑張りでかなりのバイト代をもらい、それを握りしめバスに乗り、家に帰った。レジヒラク、完全に沈黙である。

その日以来、屋台でのバイトを誘われた際は必ず断るようにしている。