Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

バイト生失格

恥の多い生涯を送って来ました。

太宰治人間失格」の冒頭の引用から始まる今回のブログで、大学生の時のアルバイトの話をしたいと思う。

僕は4年間塾の講師をさせていただいた。毎日刺激が多く、生徒と向き合う難しさに直面したことや、合格を掴み取る喜びを共有したりなど、中身の濃い4年間だった。

同時に掛け持ちで、大学1年生から2年生の途中までの約1年半、とあるスーパーでアルバイトもしていた。

面接に行った日のことをよく覚えている。鹿児島から来た、やや図々しいものの人情に熱くユーモアに長けた同級生と一緒のタイミングだった。お互い、入る時が一番真面目だったと彼女も思っていることだろう。

僕の仕事の内容は、客が出したゴミを捨て、牛乳や卵を陳列し、賞味期限が近いパンや惣菜に値引シールを貼り、臨機応変にレジに立つというものだった。割と楽な仕事だったので悠々自適にバイト生活を送っていた。

そんなある日のことである。マネージャーがバイト生を集め、深刻な面持ちである話を始めた。

 

最近売り上げが落ち込んでいる。店長は悪くない。バイト生が悪い。特に態度が悪い。お客様にきちんと挨拶を徹底しなさい。その練習のためにこれからバイト前の10分にバックヤードにて、みんなで声出しをしてから仕事を始めることとする。このような内容だった。

 

僕は声が大きい方だ。その声出しの時も誰よりも大きな声を出し、パートのおばちゃんが何事かと覗きにくるほどのボリュームで、「いらっしゃいませえええ!!!!!!」と練習をした。マネージャーは明らかにふざけている僕に対して、その調子だ、という声かけをした。色々と諦めていたのだろう。

フロアでも、客を驚かさない程度に声を張った。「いらっしゃいませ!!本日はペット用品がお安くなっております!!」。ちなみに、そのスーパーにペット用品は1つもなかった。

ふざけたおした挙句、いらっしゃいませの声を裏声で出し始めた。大きな声よりも高い声の方がお客さんが見てくれるからである。そしてそれはだんだんエスカレートし、サザエさんのタラちゃんの声真似で挨拶するようになった。「いらっしゃいませですぅ!靴下が3枚で300円ですぅ!」ちなみに、そのスーパーには衣服は1枚も売っていなかった。

 

数日後、マネージャーが青ざめた顔をしてバイト生を集めた。次は何の話があるのかとワクワクしながら集まると、以下のような事を私たちに言った。

 

客からクレームが入った。売っていないものを宣伝している店員がいる。そして卵売り場らへんでいつも子供の声が聞こえる。気持ち悪いそうだ。誰か他にその子供の声が聞こえたバイト生はいないだろうか。怪奇現象か何かではないか。

 

僕は笑いを堪えるのに必死だった。その子供は紛れもなくタラちゃんの真似をする自分のことだった。しかし、さすがにクレームが入るとなると辞めなくてはと思いタラちゃんの声ではなく、福山雅治の声でいらっしゃいませを始めることにした。本当に仕事を真面目にしていなかった自分の罪をここで白状し、恥の多い生涯をどうにか精算させていただければと思う。