Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

500円パラドックス

今日は僕の500円玉貯金をめぐるパラドックスを紹介したいと思う。

私はひょんなことから500円玉貯金を始めることとなった。銀色で高さ13センチくらいの円柱で、 上部にはお金を入れる溝とプルトップのついた何ともシンプルな貯金箱を購入した。側面があまりにも殺風景だったので、 貯金で行きたい場所である「ピピ島(タイの孤島)」 と大きく書いた。財布の中に1枚、500円玉を発見したので何の気なしにその箱に入れた。今思えばこの瞬間、僕は逃れられないループに取り込まれてしまった。

貯金を開始した次の日のことである。 朝ごはんを食べようとコンビニでおにぎりを購入した。140円くらいだったと思う。しかし財布の中には小銭が少なく1000円札での支払いとなった。するとおつりは860円。500円玉が手に入ったのである。僕はその瞬間、その500円玉を守らなくてはならないと強く感じた。無事にこれを銀色の貯金箱に入れなくてはならない。使命感すら感じた。仕事が終わり、急いで帰宅して貯金箱にその500円玉を入れた。ガシャ、と無機質な音が私の家の静寂を一瞬、にぎやかなものへと変えた。これだ、この音。僕は2日目にして500円玉貯金の虜となっていた。

そんなある日のことである。コンビニで昼ご飯と飲み物を買った際、680円くらいの総額とな った。財布の中には、500円玉1枚と100円玉が2枚。1000円札もあった。その状況を理解したとき、 僕は硬直してしてしまった。かつての自分なら、迷わず700円を出していたことだろう。しかし、そんなことをしてしまったら500円玉が見知らぬ誰かの手に渡ってしまう。500円玉貯金に取り憑かれた僕は、500円玉を守るために1000円札と200円を出した。おつりは、520円。そう、新しい500円玉が財布に入ってきたのだ。僕はもはや、自分が500円玉をお金としてではなく精神安定のためのものとして見ていることに気が付いた。

どんなに不自然な会計になろうが、500円玉を手に入れたい。 買い物をするときにわざと500円玉を作り出すようになった僕は 、お札をどんどん消費して500円玉を入手するようになった。500円玉を多く持てば持つほど自分が強くなっているという錯覚に陥った。帰宅後すぐに貯金箱に500円を入れ、 ワンルームを小銭の音で埋め尽くす。これが生きがいとなった。 しかし、 同時に財布の中のお金が怒涛の勢いで減っていくことに気が付いた。それはそうである。500円玉に変換して財布の外の銀の貯金箱に貯金しまくっているからである。僕はこれで、ひとつのパラドックスに直面することとなる。 貯金をすればするほど金欠になる。 僕はこの難題をどう対処すればいいのか、いまだに打開策が見当たらない。ただひたすら、500円玉が奏でる金属音に、心酔する毎日である。