Hiraku’s diary

特にコンセプトはございません。ご笑覧ください。

俺が本当に「死亡」したことになった話

仕事中、父親から電話がかかってきた。

 

「拓、生きてるよな?」

 

最初、意味がわからなかった。こんな質問されたこと今まで一度もないし、父親はそんな寒い冗談を言う男ではない。

詳しく訳を聞くと、とんでもないことが今、俺の身に起きていることがわかった。

 

今俺は一人暮らしを辞め、実家で暮らしている。認知症になってしまった祖父や介護する祖母を支える父親が暮らすこの実家。祖父は尿意すら判断できなくなって入院した。こんな状況の実家を、長男として見捨てることはできなかった。

 

そして昨日である。ある地域の人が俺の実家を訪れた。その人は家にいた祖母に対し封筒を渡した。香典だった。亡くなった人を弔う金品である。

祖母は不審に思い何の話かと聞くと、その人はこう言ったという。

「この度はお孫さんの拓さんが残念です。やる気に溢れる優秀な方だったとお聞きしています。お悔やみ申し上げます。」

祖母は言葉を失い、地域の人が帰るのを見届けた。すぐに父親に電話し、父から安否の確認の電話が来たというわけである。

 

どうやら俺は市役所の中で2020年5月1日に「死んだ」事になっているらしい。仕事から帰り父親からこの話を聞いた時、馬鹿げていると笑ってしまいそうになる気持ち1割、気持ち悪さで吐き気がする気持ち9割になった。死因は分からないとなっているらしい。本当に気色が悪い。

 

俺は明日、父親に仕事を少し抜けてもらい市役所を訪れ死んでいないと大きな声で言おうと思う。本当に俺は死んでいない。ほっぺをつねったら痛いし、今晩食べた麻婆茄子も美味しかった。正直めちゃくちゃ気持ち悪いし怖い。

 

もし市役所のミスとかなら本気でブチギレようと思っている。俺が生きていると、生きているから怒れるんだと、涙を流しながら、訴えかけたい。